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非営利団体「Mama Tierra」の設立と葛藤。

非営利団体「Mama Tierra」の設立と葛藤。

南米北部に暮らす先住民族、ワユー族の生活や自立を支援するNPO(非営利団体)「ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)」。2014年に設立し、今年ようやく事務所を作るまでに至ったという、創業者のキャサリン・クレメンス=ポートマンにインタビュー。非営利団体を設立した理由や運営の苦難など、これまでの道のりを語ってもらった。
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©MAMA TIERRA, Photo: Edward Perdomo

2014年に設立されたママ・ティエラ(MAMA TIERRA)は、ワユー族の生活環境促進を目的とした非営利団体。同時に、ワユー族の女性らがハンドメイドで作る、エスニックなバッグやハットを世界に提供することで、彼女らが築き上げてきた文化や伝統を伝える役目も果たしている。スペイン語でMother Earth(母なる大地)の意味をもつMAMA TIERRAは、現在ベネズエラとスイスのNPO法人に登録されている。

ワユー族(Wayuu)とは、南米北部に暮らすコロンビアの先住民族で、約60万人がコロンビアとベネズエラの国境付近の砂漠地帯に居住。水道や電気は通っておらず、ほとんどの家庭でインフラ設備が整っていない状況だ。ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)と直接交流のある地区ラ・グアヒーラ(La Guajira)では、干ばつによる貧困や乳幼児死亡率が問題となっていることでも知られている。

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©MAMA TIERRA

「非営利団体を設立した理由は?」

「活動を開始した当初は、非営利団体を作ることを考えていたわけではないの。すべては、アメリカ先住民だった祖父との出会いがきっかけ。祖父のおかげでワユー族の女性らが作るバッグのことを知ることができた。彼女らは、苦しい生活環境のなか、何日もかけて手作業でバッグを作っている。そんな現実を目の当たりにして、私に何かできることはないかと考えていたわ」

ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)の代表でCEOを務めるキャサリンは、ベネズエラ人の母とスイス人の父の間に生まれ、両国で育った。ある日、母が養子であること知り、母の生みの親がアメリカ先住民のルーツを持つこと告げられた。この出来事を期に、実の祖父と初対面を果たした彼女は、先住民族について調べるようになったという。そして、ワユー族の女性が作るバッグの存在を知り、バッグをヨーロッパに輸入することでワユー族を支援するまでに至ったそうだ。

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ラ・グアヒーラを訪れるキャサリン。 ©MAMA TIERRA

「設立から5年が過ぎたけれど、苦労はあった?」

「無知な状態で始めた企画だったから、色々な苦労があったわ。初めは、コロンビアやベネズエラのマーケットで購入したワユー族のバッグをヨーロッパで売ることが、支援になるのでは! と考え、輸入を開始したの。クオリティのことは何も考えていなかった。これは大きなミスだったわ。

ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)のバッグは、主にラ・グアヒーラという地区に住むワユー族が作ってる。ラ・グアヒーラまでは、ジープで12時間の道のり。もちろん、先住民族の案内役を付けて訪れる必要がある。そうしないと殺される危険性もあるから。

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後は、資金面での難しさも痛感したわ。私は収入がほぼゼロの状態でここまでやってきた。生活のために、別の会社に就職していた時期もあった。現在ではやっと事務所を持つことができたし、これからもっと頑張るつもり」

設立当初、幾つかのバッグを輸入し、オンラインやブティックで販売を試みたが、品質が劣っていたことを実感。そこで、ベネズエラに渡り、現地に数ヶ月滞在することを決心した。職人を訪ね、ワユー族の女性らと出会うことで絆を深めた。今でも月に1度の頻度で、現地を訪れているそうだ。

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©MAMA TIERRA, Photo: Edward Perdomo

「エスニックな柄だけでなく、モダンな要素が含まれているアイテムもあって、モードなスタイルに合うわね」

「ありがとう。デザインにはそれぞれ意味があるの。“Be Fearless, Lioness(雌ライオンよ、恐れず大胆にいこう)”など、グラフィカルな文字を落とし込んだアイテム。また、象徴的な絵柄で人気なのは、マラカイボ・タペストリーの技術を用いたクラッチに描かれている“目”のデザインよ。お守りのシンボル、イーヴィル・アイ(呪いをかける魔力を持つ目)のバッグを持つことで、呪いから自分を守るという意味合いを込めてるの」

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©MAMA TIERRA

「大切にしていることは?」

「たくさんあるわ! まずは、女性の支援。彼女たちは貧困を余儀なくされ、1日を生き延びることで精一杯なの。女性の収入が保証されるということは、家庭生活の向上や子供たちの教育格差を無くすことにも繋がるから。

後、先住民族の文化や伝統を受け継いだハンドクラフトのみを提供することも大切にしてる。大きさに寄るけれど、1つのバッグができるまで、約4日から14日間掛かる。1本の糸で編み上げる手法を用いて、手作業で丁寧に仕上げることで、高品質が保たれているの。

同時に、ただ売って、支援をするだけでは意味がないと考えてる。工程がサステナブルでエシカルであることも重要な要素。素材はとても大切で、本当はオーガニックコットンを使用したいけれど、今の所オーガニックコットンは現地になくて、ほとんどのバッグはアクリル100%なの。ハットはヤシが原料。レザーを使用していたミニのショルダーバッグは、現在実験的にレザーに良く似た質感をうむバナナの葉で代用したものを製作中してる。丈夫で、色を塗ることもできるから、レザーの代わりになると思うわ。

しかし、リサイクルの素材で作ったメガネケースを差し出し、サステナブルな活動をする中、悩むこともあるという。

「このケースは、中国で作られたペットボトルのリサイクル素材を用いて作ったものなの。やはり質は違うわね。あと、ペットボトルをリサイクルする上でのコストや労力。生産過程で中国からベネズエラに、ベネズエラからヨーロッパに配達するでしょ? そういったことを考慮すると、リサイクルが本当に正しいのか考えさせられる」



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“I made your clothes”の紙を掲げるワユー族の女性マリベル・ポランコ(Maribel Polanco)。©MAMA TIERRA

「もうひとつ大切にしているのは、ファッションレボリューションへの参加。ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)では、すべてのアイテムに作った本人の名前を記載しているわ」

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2013年に起きたバングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場ビル「ラナ・プラザ」の崩壊後に始まった、ファッションレボリューション。購入したアイテムを裏返しに着用した写真に#whomademyclothes?(誰が私の服を作っている?)のタグをつけてたり、“Who made my clothes? と書かれた紙を手に持った写真を、ブランドのSNS(主にツイッター)に投稿するムーブメントだ。#whomademyclothes? や、#insideout(裏返し)のタグ付けは、全世界で大ブームとなり、セレブらも参加するまでに広がった。

ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)でも、#I made your clothes(あなたの服を作ったのは私)を取り入れているため、それぞれのアイテムには、作った本人の名前が記されている。



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©MAMA TIERRA,  Photo: Mirja Wark

「同時に進行しているプロジェクトはある?」

「食料を毎月供給するニュートリシャン・プログラムを支援してるわ。また、NPOとしてソープを作るワークショップも行ってる。下痢性疾患で命を落とす子どもが多い中、石鹸で手を洗うことが下痢性疾患に対する最も効果的な予防策のひとつだから。他にも、ソーラー発電で生み出された電力の供給をサポートしてる」

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©MAMA TIERRA,  Photo: Edward Perdomo

「今後どうしていきたい?」

「実は、今大学に通って人類学を学んでいるの。卒業後には、先住民族の表面的なことだけではなく、もっと核心を伝えることができたらと思ってる。ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)では、生産管理やマーケティングまでのほとんどを私が担当しているけれど、今後は誰かに託すつもり。もちろんディレクターとしては関わっていくつもりだけれど、本を書いたり、文字で人に伝えることにフォーカスしていきたい」

大学で経済学とコミュニケーションを専攻し、卒業後はプレスで働いていたキャサリン。2年前より再びチューリッヒ大学に入学し、人類学を学んでいる。ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)では、小鳥のぬいぐるみを制作し、小さな本とともに販売する新プロジェクトがあるという。本の内容は、もちろんアメリカ先住民に関すること。「キッズから大人まで楽しめるぬいぐるみ&本で、みんなにもっと先住民族のことを知ってもらえると嬉しいわ」と語った。

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クラッチ €90(参考価格)/ママ・ティエラ
ママ・ティエラ(MAMA TIERRA)
www.mama-tierra.org/en/

Editor: Moe Tsukamoto


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